MCP サーバー vs ツール vs エージェントスキル
MCP サーバー、ツールの使用、エージェントスキル:現代 AI 開発のレイヤー理解
AI ネイティブ開発が加速し、より多くのエンジニアが Claude、Cursor、VS Code AI 拡張機能などのツールをワークフローに統合しています。しかし、混乱もよく見られます:
- MCP サーバー とは正確に何か?
- MCP ツール はサーバーとどう違うのか?
- ツールの使用 とは何を意味するのか?
- Claude Code skill とは何で、どのような役割か?
- それぞれをいつ使うべきなのか?
- これらのレイヤーは実際のエンジニアリングタスクでどのように連携するのか?
この記事では、3つの概念・境界線・そして次世代ソフトウェア開発への影響を、明確かつ実践的に説明します。
MCP: 3構成要素、1つのプロトコル
MCP(Model Context Protocol)は Anthropic によって作られ た、AI モデルが外部リソース・API・ツール・データベース・内部システムへアクセスするための標準化された手段です。
主要な3つの要素があります:
- MCP サーバー: AI クライアントへ能力を公開するバックエンドサービス
- MCP ツール: サーバーが提供する具体的で呼び出し可能なアクション
- MCP プロバイダー: Claude Desktop, Cursor, VS Code 拡張機能などの統合
また MCP の外部ですが、混同されやすい存在として:
- Claude Code skill: IDE 内での Claude の組み込みプログラミング知能
これらのレイヤーを理解することで、より良い AI ワークフローの設計に繋がります。
ツールとは?(一般的な AI ツール使用)
MCP ツールや Claude Code skill の前に、AI 世界で“ツール”とは何かを把握しておきましょう。
現代の LLM システムにおいて、ツールとは:
AI モデルがテキスト生成を超え、現実世界で何か動作をするために呼び出せる外部処理です。
これはモデルに行動力を与えます。ツールにはほぼ何でもなり得ます:
- API エンドポイント
- データベースクエリ
- ファイルシステム操作
- ブラウザアクション
- コード実行
- メール送信
- ユーザー作成
- クラウドリソースへの操作
- LLM の関数呼び出し
モデルがツールを呼ぶ決定をした場合、それは単なる言語出力を超え、実際の作用を行います。
ツールが存在する理由
ツールが存在する理由は、テキスト生成だけのモデルにはすぐ限界が来るからです。
例えばモデルは説明や推論、コードを草案できますが、あなたのシステムに“触れる”ことはできません。データベースを直接クエリしたり、ファイルを変更したり、API をコールしたり、クラウドに何か配備したり、複数ステップの長い操作を実行することもできません。
モデルにツール群を与えれば、これらのギャップが消えます。モデルは実際のインフラに制御された方法でアクセスでき、あなたは可能な範囲や操作方法を厳しく管理できます。ツールは構造・安全性・実行レイヤーを与え、テキスト志向モデルの本質的な弱点を埋めます。
ツール使用のコア概念
ツールは契約(コントラクト)で定義されます:
モデルはこの定義を見れば:
- ツールの目的を理解し
- どのような時に使うべきか推論し
- 入力オブジェクトを組み立てて
- ツールを呼び出し
- 結果を次のステップに活用できます
ツールによって LLM はオーケ ストレーター的存在になります。
重要な境界線
ツールはしばしば過大評価されがちですが、これは知性ではありません。またビジネスルールや権限、ワークフローのロジックも含みません。ツールとは、あくまでモデルが呼べる小さく定義済みの操作です。それ以上でもそれ以下でもありません。マルチステップのワークフローや意思決定といった高度な挙動は、ツール自身からではなくモデルが複数のツールを論理的に連鎖させて生み出します。
エージェントエコシステムにおけるツールの価値
現代のエージェントフレームワーク―OpenAI Functions, Claude Tools, MCP, LangChain は全て同じ原理に基づいています:LLM は何らかのアクションを取れるようになって初めて、本当に有用な存在になります。言語出力だけでは不十分で、モデルには現実世界に働き掛ける方法が必要なのです。
ツールこそ、その可能性を実現する中間層です。モデルの推論を、あなたのシステムの実際的な機能と繋ぎ、しかもコントロール・権限付きの環境で行えます。この橋渡しのおかげで、AI は受動的なチャットボットから、データ取得・ファイル操作・ワークフロー連携・バックエンド処理実行などを行う“オペレーター” へと進化しました。
その結果、ツールの利用は今や IDE アシスタントやバックエンド自動化・DevOps コパイロット・IAM 自動化・データエージェント・企業ワークフローエンジンなど、本格的な AI アプリの根幹となっています。MCP はこれらの進化の上に立ち、ツール公開の一貫したプロトコルを提供し、モデルが現実のシステム機能をどう見つけ、どうやって連携するかを標準化します。
MCP サーバー:AI 用バックエンド能力レイヤー
MCP サーバーは、AI アシスタントへ限定・制御された能力群を公開するバックエンドサービスと捉えてください。モデルにシステムへの無制限アクセスを許すのではなく、利用させたい部分だけ包み込むのです:内部 API、認証ロジック、DB 操作、業務ワークフロー、権限チェック など。
例えば IAM プラットフォーム Logto の場合:
- 組織の一覧取得や作成
- org や M2M トークン発行
- ユーザーの API アクセス権検査
- アプリ設定の閲覧
- テナント設定に基づく安全なバックエンドスニペット生成
MCP サーバーの価値は、これらの能力を一元的かつ統制された形で提供できる点です。
クライアントごとバラバラな統合でなく、すべてが一つの明確なインターフェースの背後に集約されます。このため:
- 複数の AI クライアントで同じバックエンドロジックを再利用可能
- セキュリティ・権限境界が一ヶ所に集中
- すべてのエージェントに一貫した契約を維持可能
- 企業システムで AI の操作可能範囲を厳格に制御
よって MCP サーバーは正確性・アクセス制御が重要な場面―ID システム・決済・CRM・DevOps・社内管理ツール等に自然にフィットします。
MCP ツール:AI モデルに公開される原子的アクション
前章で説明した通り、ツールはサーバーそのものではなく、サーバー内部にある個々のアクションです。
例:
create_organizationinvite_memberlist_applicationsgenerate_backend_snippetinspect_user_access
ツールは:
- 小さく
- ステートレス
- LLM から呼びやすく
- 大きなワークフローの部品となる
ツール単体では文脈保持・セキュリティポリシー付与はしません。MCP 経由で公開される“ファンクション”だと捉えましょう。
Claude Code skill:IDE の知能レイヤー
Claude Code skill は MCP の一部ではありません。
これは Claude が以下のような環境内で持つ組み込み能力です:
- Cursor
- Claude Desktop
- VS Code / JetBrains エディタ
主なコードスキル例:
- リポジトリ全体の読解
- 複数ファイルへの一括編集適用
- 新規モジュール生成
- ログのデバッグ
- コードのリファクタリング
- 複数ファイル横断タスク実行
Claude Code skill ができないこと:組織権限管理・テナントデータ取得・安全な業務ワークフロー実行・内部インフラへの直接アクセス・本番環境の保護リソース修正等は不可です。まさに MCP の存在意義はここにあります。
関係性の可視化
要するに:
- Claude Code Skill = コード推論
- MCP ツール = アクション
- MCP サーバー = 能力 + セキュリティ + 業務文脈
これらは相補的な存在で、互いの代替ではありません。
なぜ MCP サーバーがエンタープライズ AI の入口になるのか
MCP サーバーは、AI 開発の根本的課題を解決します:モデルは、あなたの内部システムを、構造化かつ安全な形で公開しない限り理解できません。この層なしでは、モデルは推測・パターンマッチ・実際に実行できない指示出力しかできないの です。
MCP サーバーは、その欠落した架け橋です。制御下で内部機能を公開し、セキュリティ境界を維持しつつ、モデルに現実の能力を与えます。実際には MCP サーバーで以下が可能に:
- バックエンド機能の安全な公開
- 全アクションへの認証・認可適用
- 複数 AI エージェントへの一貫インターフェース維持
- プロンプト内にロジックを埋め込まずマルチステップワークフロー支援
- モデルが強力に働くが、必ず定義済みの枠内に限定
こうした理由で、Logto などの IAM プラットフォームは MCP と極めて相性が良いのです。
パーミッション・トークン・組織・スコープ・M2M フローといった概念は、MCP サーバーが強制するセキュリティ保証へ直結し、アイデンティティが安全な AI 実行の基盤となります。
MCP サーバー・ツール・Claude Code skill の使い分けは?
| シナリオ | ベストな選択 |
|---|---|
| 複数ファイルのコード編集 | Claude Code Skill |
| 単純なアクション実行 | MCP ツール |
| セキュアな業務ワークフローの公開 | MCP サーバー |
| 内部バックエンド能力との統合 | MCP サーバー |
| AI 駆動プロダクト機能構築 | MCP サーバー + ツール |
| IDE からインフラ操作を可能に | Claude Code Skill + MCP サーバー |
| ID/アクセス制御操作 | MCP サーバー |
未来:3レイヤーの連携
最強の AI システムはこの3つの組み合わせです:
- Claude Code:コード推論&リファクタリング担当
- MCP ツール:原子的オペレーション用
- MCP サーバー:安全なバックエンド機能のため
この連携で:
- IDE の知能化
- 実行可能なツール
- 企業レベルの能力
このスタックにより、AI は“ただの便利なチャットボット”から:
- IAM オペレーター
- DevOps アシスタント
- バックエンド自動化エンジン
- ワークフローエグゼキューター
などに変貌します。Logto のようなプラットフォームの場合、これはアイデンティティ&認可分布のための自然な流通レイヤーとなります。
最終まとめ
MCP サーバー
AI へ安全なシステム能力を提供するバックエンドサービスです。
MCP ツール
サーバーによって提供される原子的アクション――呼び出し可能なファンクションと考えれば良いです。
Claude Code Skill
コード理解と高度な編集を実現する IDE の知能。しかし単体でセキュアなシステムにはアクセスできません。
まとめると:AI はあなたのコードを理解(Claude Code)、精密なアクションを実行(ツール)、内部システムで安全なワークフローを(MCP サーバー)使って実現するのです。
これこそ、次世代 AI ドリブン開発の基盤です。

